酵母は具体的にどのような原因で老化していくのでしょうか。それは老廃物です。老廃物には毒性があり、それが酵母を死に至らしめる原因の1つとなっていると考えられています。
この老廃物の正体は、細胞分裂でDNAをコピーする時に生じるものです。細胞分裂の過程で、2本1組になっているDNAがほどけながら、新しいペアをつくります。そのときに途中でDNAがちぎれ、それが老廃物となる事があるのです。
ちぎれるか否かはDNAの状態によて左右されますが、通常はヒストンというたんぱく質に巻き付いています。ここにアセチル基が付く事があり、するとヒストンの電気的性質が変わり、巻き付きが緩くなるというわけです。そこで登場するのがサーチュイン。ヒストンについたアセチル基を切り取る働きをしています。
アセチル基がなくなれば、DNAは再びヒストンと密着し、ちぎれにくくなります。つまり、サーチュインを多くつくり出せるようになれば、分裂回数が増えます。この研究が、サーチュインが実際に長生きをもたらすメカニズムを確かめるきっかけとなったのです。